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免疫沈降法

抗原抗体複合体の沈降反応(免疫沈降)を利用すれば、細胞溶解液、組織溶解液といった複雑なタンパク質混合液から特定の抗原を分離することができます。免疫沈降法は、きわめて有益な研究ツールであることが実証されており、特定の抗原に関する重要な情報を解明する目的で、多くの研究室でルーチンに使用されています。そのアプリケーションは、機能的研究に使用する抗原の小規模精製、N末端配列の解析、タンパク質間相互作用の検討、細胞または組織内における抗原の相対存在量および化学量論的分布の検討などです。免疫沈降アッセイの成功は、主に2つの要因、すなわち元のサンプル中の抗原存在量と抗原に対する抗体の親和性(通常は108 mol-1以上の親和性が必要)に依存します。

基本的な6ステップ

  1. 抗原の標識(任意)
  2. サンプルの調製:細胞の溶解による抗原の遊離
  3. 抗原抗体(免疫)複合体の生成
  4. 抗原抗体複合体の沈降
  5. 解析
  6. 問題解決

免疫沈降法の手順を開始する前に、適切な実験コントロールを必ずご用意ください。コントロール抗体としては、特異的抗体とできる限り性質が類似しているものをご用意ください。ポリクローナル抗血清を使用する場合の理想的な抗体ネガティブコントロールは、免疫に使用した個体から免疫前に採取した血清です。しかし、そのような血清が用意できない場合には、同一種の別個体から採取した非免疫(正常)血清を同じ濃度で使用しても構いません。
抗原の標識(任意)

抗原は、放射性プローブ(3H-チミジンなど)を含有する培地中でのインキュベーション、表面タンパク質のヨウ素標識やビオチン化、放射能標識した水素化ホウ素ナトリウムによる処理や、その他の発表されている手法により標識することができます。

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サンプルの調製

抗原抗体複合体を生成させる前に、抗原が抗体により認識されるよう、抗原を細胞または組織サンプルから効率的に抽出する必要があります。このためには、抗原の細胞内局在(核、細胞質、膜結合性など)を考慮することと、構造的な完全性にできる限り影響を与えずに抗原を抽出するための最善の方法を決定することが必要です。抽出/細胞溶解のプロトコールを開始するに先立ち、免疫沈降法により入手したい情報を検討する必要があります。例えば、その後の機能的研究に使用するための機能タンパク質を抽出する必要があるでしょうか。また、タンパク質間相互作用、すなわち標的抗原と細胞内で相互作用し標的抗原とともに免疫沈降するタンパク質を分離させたいかどうかを検討する場合もあるでしょう。このような検討に基づき、適切な溶解方法を決定する必要があります。効果的な溶解方法については実験により決定する必要もあります。溶解手順の最も重要な側面は、おそらく溶解緩衝液の組成です。溶解緩衝液のイオン強度(塩濃度)、界面活性剤の選択およびpHは、抗原の抽出効率および完全性に重大な影響を及ぼす可能性があります。弱塩基性でイオン強度が弱い緩衝液は通常、タンパク質を可溶化させる傾向にありますが、高塩濃度で酸性の緩衝液は、抗原の変性および沈殿を引き起こす場合があります。界面活性剤の選択もきわめて重要です。界面活性剤の選択は、抗原の細胞内局在や、サブユニットの会合をはじめとするタンパク質間相互作用を保存したいか否かなど、多くの要因により影響されます。一般に、非イオン性界面活性剤(Triton®X-100、NP40など)や両性イオン性(CHAPSなど)界面活性剤は、非共有結合性のタンパク質間相互作用を保存する傾向にあります。一方、イオン性界面活性剤(SDS、デオキシコール酸ナトリウムなど)は、タンパク質間相互作用を変性させやすい傾向にあり、抗体による標的抗原の認識能に悪影響を及ぼす可能性があります。いくつかの市販の界面活性剤の特徴を付録に概説していますので、ご参照ください。溶解方法を問わず、溶解手順において遊離するプロテアーゼによる標的抗原のタンパク質分解を防止するため、溶解緩衝液には過剰量のプロテアーゼ阻害剤カクテルを添加する必要があります。プロテアーゼ阻害剤については付録をご参照ください。

また、すべての溶液はあらかじめ冷却しておき、溶解手順の全ステップとも氷上で実施する必要があります。溶解に必要な細胞数は、細胞系統や、サンプル中の標的抗原の予想存在量により異なります。一般に、溶解液は、溶解緩衝液1 mLあたり細胞107個以上から調製します。溶解液の調製後、タンパク質濃度を測定し、溶解液のタンパク質濃度を溶解緩衝液またはPBSを用いて2~5 mg/mLに調整します。溶解緩衝液にTriton®X-100を使用する場合、Triton®X-100は280 nmに強い吸収をもつため、280 nmにおける吸光度を用いてタンパク質濃度を求めることができないことに留意してください。抽出液を直ちに使用しない場合には、分注し、ご使用になるまで-70 °Cで保存してください。抽出液中のタンパク質濃度が0.1 mg/mL未満の場合には、凍結保存前に高品質のBSAを1% (w/v)になるよう添加してください。

免疫複合体の沈降

免疫複合体を沈降させるには、Protein AまたはProtein Gアガロース、免疫沈降用二次抗体、あるいはProtein Aを発現させた黄色ブドウ球菌を使用します。Protein AまたはProtein Gに対する抗体の親和性は、免疫グロブリンのサブクラスおよび由来動物種に依存します。例えば、Protein Aは、すべてのウサギ一次抗体の免疫沈降には最適ですが、ニワトリ抗体の免疫沈降には適していません(Protein A/G結合親和性に関しては付録参照)。

マウス一次抗体の免疫沈降にProteinを使用する場合には、Protein A/Gの添加前にウサギ抗マウスIgG(免疫沈降用二次抗体)5 μgを添加することをお勧めします(穏やかに混合し、4 °Cで30分間インキュベーションした後、Protein A/Gを添加)。Protein AまたはGアガロースを沈降に使用する場合、上記手順により調製される量の抗原抗体複合体を沈降させるには、50% Protein A/Gアガローススラリー量は10~20 μLで十分です。

Protein A/Gアガロースの添加後、穏やかに振盪しながら4 °Cで30分間インキュベーションします。その後、遠心と免疫沈降用緩衝液への再懸濁により3回洗浄し(抗原を放射能標識した場合にはそれ以上)、抗体-抗原-Protein A/G複合体を遠心により回収します。

解析

電気泳動に供するペレットは、2倍濃度のSDSサンプル調製用緩衝液に再懸濁した後、SDS-PAGEに溶解させ、ウェスタンブロットにより検出します。精製された免疫複合体は、酵素研究、リガンド結合、さらなる免疫付与や、免疫化学的手法にも使用できます。これらの手法を免疫沈降法と組み合わせることにより、抗原に関して発見される情報量が大幅に増えます。

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