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免疫沈降キット


Catch and Release® v2.0

Catch and Release Reversible Immunoprecipitation System

Catch and Release® Reversible Immunoprecipiation System (カタログ番号 17-500)は、従来法によるIPに伴う多くの制約を克服しています。独自のSpin Columnフォーマットは、より迅速かつ簡便に、より再現性の高いIPを行うことができるよう設計しました。Catch and Release®を使用すれば、非特異的タンパク質の混入がほとんどない、未変性の抗原抗体複合体を溶出させることができます。また、Catch and Release®の便利なSpin Columnフォーマットは、性能が向上し、サンプルの処理能力が高まりました。

Catch and Release® Columnは、上部にねじ蓋が付属し、底部の栓が分離できるマイクロ遠心対応のSpin Columnに、当社独自の樹脂が詰められています。抗原抗体複合体を結合させるためのAntibody Capture Affinity Ligandもキットに含まれており、複合体と樹脂をつなぎ留める役割を果たします。ほとんどの溶解液中のタンパク質および抗体は、Antibody Capture Affinity Ligandの非共存下では、ほとんど、あるいはまったく樹脂に結合しません。樹脂から抗原抗体複合体を変性または非変性状態で迅速かつ簡単に溶出できるのは、この特徴のためです。Catch and Release®は、ウサギおよびマウス抗体と多くのタンパク質の免疫沈降法で検討され、成功をおさめています。ほとんどの抗体で、30分という短いインキュベーション時間で目的とする結果が得られますので、従来法によるIPと比較して時間を大幅に節約できるという利点があります。

Catch and Releaseの特長

  • 便   利- IP にProtein A またはGアガロースが不要です。
  • 可 逆 的- タンパク質を変性または非変性状態で溶出できます。
  • 再現性良好- 新規のスピンカラムフォーマットによりサンプルの処理が劇的に簡素化され、アッセイの再現性が保証されます。

システム内容

  • Antibody Capture Affinity Ligand : AntibodyCapture Affinity Ligand の10% グリセロール、2 mM PMSF 含有PBS 溶液(60 μg/500 μL)入りのバイアル1 本。4 ℃で保存。6 ヶ月間安定。
  • Catch and ReleaseR Wash Buffer、10X :界面活性剤(10%NP-40 および2.5% デオキシコール酸)を含有する10 倍濃度の緩衝液(pH 7.4)15 ml 入りのバイアル1 本。4 ℃で液体。2 年間安定。

注記:緩衝液を4 ℃で保存していて結晶が生じた場合には、使用前に室温で温め、短時間ボルテックスしてください。
  • Non-denaturing Elution Buffer、4X : 4X PBS ベースのIP Elution Buffer 10 ml 入りのバイアル1 本。4 ℃で保存。2 年間安定。
  • Denaturing Elution Buffer、1X : 1X PBS ベースのIP Elution Buffer 4 mL 入りのバイアル1 本。使用直前に、β-メルカプトエタノール(β ME はキットには含まれていません)を最終濃度5%(v/v)となるよう添加してください。4 ℃で保存。1 年間安定。
  • Catch and ReleaseR Spin Column : IP 捕捉用樹脂懸濁液0.5 mL(20% w/v)を含むカラム50 本
  • Catch and ReleaseR Capture Tube :リザーバチューブ100 本

* 試薬量が通常包装サイズ(カタログ番号17-500)の1/10 のCatch and ReleaseR Sample Pack(カタログ番号17-500A)もご用意しています。
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試薬の調製

  • 別途記載がない限り、キットに含まれる試薬原液の希釈には、必ずMilli-QR 水などの高品質の水を用いてください。
  • ゲル電気泳動を行う際には、分離する必要がある特定タンパク質について考慮しつつ、ゲルおよび装置のメーカーの指示に従って実施します。
  • 分離したタンパク質をメンブレンに転写する際には、転写装置のメーカーの勧告に従ってください。
  • Catch and ReleaseR によるIP とその後のウェスタンブロット解析は、ニトロセルロースまたはPVDFメンブレンに対応しています。

Catch and Releaseのプロトコール

注記:以下に概説するCatch and Release®の手順では、さまざまな種類のターゲットタンパク質に対する抗体で問題がないことが確認されたインキュベーション時間および温度を採用しています。これらの条件が、お客様がIP手順に普段使用されている条件と異なる場合には、キットを最初に使用される際、お客様が普段使用されている方法に従ってください。例えば、サンプルと一次抗体のインキュベーション条件を普段、4℃で1時間とされている場合には、ステップ5でその条件に従ってください。Catch and Release®キットがお客様の抗体およびタンパク質に使用できることが確認された後、インキュベーション時間を調整することにより、手順を最適化することができます。抗体によっては、10~15分もの短時間で最適な抗原結合を示すものもあれば、一晩インキュベーションを必要とするものもあります。室温でのインキュベーションが適するものもあれば、4 ℃でのインキュベーションが最適のものもあります。この2種類の主要パラメータは、抗体、溶解液および目的のタンパク質ごとに実験的に決定する必要があります。

注記: Catch and Release®キットは、IP His-タグ化タンパク質には使用しないでください。



1.インキュベーションおよびすべての洗浄に使用するのに十分な量の10X Catch and Release®Wash Bufferを、Milli-Q®水で1X使用濃度に希釈します。洗浄に約2.5 mlが必要なほか、抗体のインキュベーションにもある程度の量が必要です(ステップ4)。
2.使用するSpin Column、Capture Tubeおよびマイクロ遠心チューにラベル表示します。底部のスナップ式の栓を取り(後で使用するため保存しておいてください;下図を参照)、Spin ColumnをCapture Tubeに挿入します。スクリューキャップを取り、5000 rpm (2000 xg)で15~30秒間遠心することにより、樹脂スラリー緩衝液を除去します。樹脂を1X Wash Buffer 400 μLで2回洗浄します。Capture Tubeを空にし、Column底部にスナップ式の栓をします。
3.試薬混合液の容量を求めます:
  1. 細胞溶解液500 μg。注記: 1.これは推奨される開始容量ですが、最適量は抗体および抗原ごとに実験的に求める必要がある場合があります。2.ジチオスレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール(β ME)などの還元剤が高濃度(>1 mM)含まれていると、抗原や抗体が変性したり、捕捉が阻害される可能性があります。
  2. 特異的一次抗体および陰性コントロール抗体1~4 μg。全抗血清または腹水5~10 μl。注記:これは推奨される開始量ですが、最適量は抗体と、サンプルに含まれる抗原ごとに実験的に決定する必要がある場合があります。対応する陰性IPコントロールに(すべての免疫沈降手順を)実施し、横並び比較することを強くお勧めします。
  3. Antibody Capture Affinity Ligand 10 μL
  4. 最終総量を500 μLとするのに十分量の1X Wash Buffer
4.Spin Columnの底部に栓をし、次の順番でカラムに試薬を添加します:
  1. 1X Wash Buffer
  2. 細胞溶解液
  3. 特異的一次抗体および陰性コントロール抗体
  4. Antibody Capture Affinity Ligand
5.カラム上部に(スクリューキャップで)蓋をし、ローテーターまたは撹拌機上で室温、30分間イン2.キュベーションします。インキュベーション中、スラリーを懸濁状態に保ちます。
6.底部のスナップ式の栓を取り、廃棄します。Capture TubeにColumnを挿入します。スクリューキャップを取り、5000 rpm (2000 xg)で15~30秒間遠心し、フロースルーを回収します。必要な場合には、フロースルーをマイクロ遠心チューブに移し、ウェスタンブロット解析用に保存します(問題解決が必要な場合に役立ちます)。
7.Columnを 1X Wash Buffer 400 μLで3回洗浄します。洗浄ごとに5000 rpm (2000 xg)で15~30秒間遠心します。洗浄液はウェスタンブロット解析および問題解決用に(必要に応じて)保存しておくことができます。
8.Columnを新しいCapture Tubeに挿入します。
9.タンパク質はステップ9Aまたは9Bのように、Columnから変性状態(SDS-PAGEおよびウェスタンブロット用)または非変性状態(キナーゼアッセイ用)で溶出させることができます。
  1. タンパク質を変性、還元状態で溶出させる場合:β ME 含有1X Denaturing Elution Buffer70 μL をSpin Column に添加します。遠心し、溶出液をウェスタン解析用に保存します。注記:このステップはステップ9B の後に行うこともできます。
  2. タンパク質を非変性状態で溶出させる場合:4X Non- Denaturing Elution Buffer を1X に希釈し、70 μL をSpin Column に添加します。SpinColumn を5000 rpm(2000 xg)で遠心し、溶出液をウェスタン解析などのアッセイ用に保存します。

注記:
  • 2Xまたは4X Non-Denaturing Elution Bufferでさらに溶出を行うことにより、結合物の回収率を最大限に高めることができます。
  • 一方または両方のプロトコール(ステップ9Aおよび、または9B)を用いた溶出により、抗原の回収率がさらに高まる場合があります。
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Catch and Release® Kit Systemを用いた場合のデータと従来法による免疫沈降データの比較

Catch and ReleaseR Kit を用いた非変性状態での溶出
Catch and ReleaseR カラムおよびプロトコールとNon-denaturing Elution Buffer を使用し、cdk2 の免疫沈降を行いました。HeLa 細胞の核抽出物とA.抗CDK2 抗体(カタログ番06-505)またはB.正常ウサギIgG(陰性コントロール)を室温で1 時間混合しました。各分画からサンプルを採取しSDS-PAGE ゲルで泳動後、免疫ブロットを行いました。上方のバンドはIgG 重鎖、下方のバンドはcdk2 を示します。レーン1:フロースルー、レーン2 :洗浄液1、レン3 :洗浄液2、レーン4 :洗浄液3、レーン5 :溶出液1、レーン6 :溶出液2、レーン7 :溶出液3、レーン8 :抗CDK2 抗体、レーン9 : HeLa 細胞の核抽出物。


Catch and ReleaseR Kit を用いた変性状態での溶出
Catch and ReleaseR カラムおよびプロトコールとDenaturing Elution Buffer を使用し、cdk2 の免疫沈降を行いました。HeLa 細胞の核抽出物とA.抗CDK2 抗体(カタログ番号06-505)またはB.正常ウサギIgG(陰性コントロール)を室温で1 時間混合しました。各分画からサンプルを採取しSDS-PAGE ゲルで泳動後、免疫ブロットを行いました。上方のバンドはIgG 重鎖、下方のバンドはcdk2 を示します。レーン1:フロースルー、レーン2 :洗浄液1、レーン3 :洗浄液2、レーン4 :洗浄液3、レーン5 :溶出液1、レーン6 :溶出液2、レーン7 :溶出液3、レーン8 :抗CDK2 抗体、レーン9 :HeLa 細胞の核抽出物。


従来法によるIP を用いた変性状態での抽出
Protein A アガロースおよびDenaturing Elution Buffer を使用し、従来法によるcdk2 の免疫沈降を行いました。HeLa 細胞の核抽出物とA.抗CDK2 抗体(カタログ番号06-505)またはB.正常ウサギIgG(陰性コントロール)を室温で1 時間混合しました。各分画からサンプルを採取しSDS-PAGE ゲルで泳動後、免疫ブロットを行いました。上方のバンドはIgG 重鎖、下方のバンドはcdk2 を示します。レーン1:非結合物、レーン2 :洗浄液1、レーン3 :洗浄液2、レーン4 :洗浄液3、レーン5 :溶出液1、レーン6 :溶出液2、レーン7 :溶出液3、レーン8 :抗CDK2 抗体、レーン9 : HeLa 細胞の核抽出物


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Catch and Release®免疫沈降キナーゼアッセイ(IPK)のプロトコール

非変性状態で溶出させたタンパク質(すなわち、上記のステップ9Bに示した非変性状態での溶出)を用いてキナーゼアッセイを行うため、Catch and Release®キットをactive Erk1/2と免疫沈降するAnti-Erk1/2 (カタログ番号 06-182)とともに使用しました。active Erk 1/2を溶出させ、ミリポアの非放射性MAP Kinase/Erk Assay Kit (カタログ番号 17-191)とともに使用しました。非放射性MAP Kinase/Erk Assay Kitは、免疫沈降物中のMAP (mitogen-activated protein)キナーゼ(別名 Erk1/2)のホスホトランスフェラーゼ活性を測定するために設計されています。このアッセイキットは、特異的基質(myelin basic protein、MBP)のリン酸化を測定するもので、リン酸化された基質をリン酸化特異的MBPモノクローナル抗体でプローブし、免疫ブロット法により解析します。

細胞溶解液の調製

ラット褐色細胞腫(PC-12)細胞をサブコンフルエントな状態まで培養した後、血清飢餓培養を一晩行いました。Mapキナーゼを活性化するため、細胞をNGFで刺激し(50 ng/mL、37 ℃で10分間)、氷冷した緩衝液A(50 mM Tris、pH 7.5、1 mM EDTA、1 mM EGTA、0.5mM Na3VO4、0.1% β-メルカプトエタノール、1% Triton X-100、50 mMフッ化ナトリウム、5mMピロリン酸ナトリウム、10 mM β-リン酸グリセロールナトリウム、0.1 mM PMSF、1 mg/mLアプロチニン、ペプスタチン、ロイペプチン、1 mMミクロシスチン)に溶解しました。ミクロシスチンは、active MAPキナーゼを脱リン酸化する可能性がある細胞内のPP1およびPP2Aホスファターゼを完全に不活性化する目的で添加しました。細胞溶解後に残存した不溶物は、4 ℃、16,000 xgで、10分間遠心することによりペレット状にしました。

細胞溶解液のトータルタンパク質濃度を、ブラッドフォード法により、BSAを標準物質として測定しました。キナーゼ活性を保つため、免疫沈降法の実施前に細胞溶解液を氷冷緩衝液Aで1 mg/mLまで希釈しました。

Catch and ReleaseR Kit を用いて非変性状態で溶出させた活性型キナーゼの免疫沈降


pNGF 処理したPC-12 細胞を緩衝液A で溶解後、免疫沈降-キナーゼアッセイを実施しました(カタログ番号06-182 の分析証明書を参照)。溶解液(500 μg)を4 μg の正常Rabbit IgG(レーン1 および3) またはAnti -MAP Kinase(レーン2 および4)とのIP に使用しました。IP はCatch and ReleaseR(レーン1 および2)または従来法(レーン3 および4)により実施しました。最終回の洗浄にAssay Dilution Buffer(カタログ番号17-191 に同梱)を使用し、溶出液をAssay Dilution Bufferで1X に希釈したことを除き、Catch and ReleaseRキットは取扱説明書に従って使用しました。IP の後、等量のCatch and ReleaseR 溶出液または従来法によるIP 後のアガロースビーズを用いて、非放射性MAP Kinase Assay Kit(MBP をMAP キナーゼの基質として使用)によりMAP キナーゼアッセイを行いました。注記: IP 用抗体はウサギIgG で、ウェスタンブロットによる検出にはマウスモノクローナル抗体を使用したため、IgG 重鎖は検出されません。アッセイ後、SDS-PAGE サンプル調製用緩衝液で反応を停止させ、抗リン酸化MBP 抗体を用いたSDS-PAGE/ウェスタンブロット解析に使用しました。リン酸化MBP の泳動位置を矢印で示します(検出されたこれより高分子量のタンパク質は、MBP の二量体および/または還元されていないリン酸化体であると考えられます)。Catch and ReleaseR システムを用いた免疫沈降法により、activeMAP キナーゼが効果的に免疫沈降されたことがわかります。興味深いことに、Catch and Release キットにより得られたキナーゼは、従来法によるIP により得られた、アガロースビーズと複合体を形成したままのキナーゼと比較して有意に高い活性を示しました。

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活性型キナーゼの免疫沈降プロトコール
正常ウサギIgG(陰性コントロール)4 μgまたは抗Erk1/2抗体4 μgは、上記のCatch and Release Reversible Immunoprecipitationプロトコールに示したように使用しました。ただし、ステップ7に示した最終回のカラム洗浄にKinase Assay Dilution Buffer(ADB)(非放射性MAP Kinase/Erk Assay Kit[カタログ番号17-191]に同梱)を使用し、溶出液を1Xに希釈した点(すなわち、ステップ9Bに示した溶出液70 μLを等量のADBで希釈)は、上記プロトコールと異なります。

すべてのキナーゼ反応は、反応液の総容量を50 μLとし正常IgG (陰性コントロール)または抗Erk1/2抗体を用いて実施しました。反応は、30 ℃で30分間混合しながら実施しました。

ComponentAmount
MAP Kinase Substrate Cocktail (cat. #20-166)10 μL
Magnesium/ATP Cocktail (cat. #20-113)10 μL
Assay Dilution Buffer (cat. #20-108)10 μL
Eluate of IP material20 μL
Total50 μL

インキュベーション後、キナーゼ反応液50 μLを2X Laemmliサンプル用緩衝液/サンプル還元用緩衝液で希釈し、最終容量を100 μLとしました。サンプルを5分間沸騰させました。沸騰させたサンプル100 μLから20 μL分取し、MES泳動用緩衝液を用いてInvitrogenの4~12% Bis-Trisゲルで泳動しました(添加したMBP基質濃度は2 μg/レーン)。タンパク質をニトロセルロースまたはPVDFメンブレンに転写し、非放射性MAP Kinase/Erk Assay Kit(カタログ番号 17-191)のデータシートに記載されている指示に従って、抗リン酸化MBP抗体でプローブしました。

注記:免疫沈降にCatch and Release®を用いる場合、従来法を用いる場合を問わず、等量の細胞タンパク質(総量500 μg)を使用しました。
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EZ-ChIP®

クロマチン免疫沈降法(ChIP)

クロマチン免疫沈降(ChIP)法は、ゲノムのある領域に関連する特定のタンパク質を同定し、また反対に特定のタンパク質に関連するゲノムの領域を同定する手法として幅広く使用されています。このようなタンパク質としては、特定のアミノ酸が修飾されたヒストンアイソフォームや、その他のクロマチン関連タンパク質が考えられます。ヒストン修飾を認識する抗体を使用すれば、ChIPにより修飾の量を「測定」することができます。例えば、遺伝子発現を変化させうる各種条件下に置かれた特定遺伝子のプロモーター領域に関連した、ヒストンH3アセチル化の量を測定することができます。この手法により検討できるタンパク質はヒストンのみではありません。最近の関心は、ゲノムまたは特定遺伝子座における転写因子の分布解析に集まっています。

ChIPを実施する際には、最初に細胞をホルムアルデヒドで固定してDNAとタンパク質を架橋させた後、クロマチンを細胞から回収し、特異的抗体を必要とする免疫選択プロセスに供します。目的のタンパク質と架橋を形成しているDNA配列もすべて、クロマチン複合体の一部として免疫沈降します。クロマチン断片の免疫選択およびDNAの精製後、特異的DNA配列を検出します。検出されるDNA配列が研究対象とするタンパク質、あるいはヒストン修飾に関連していれば、免疫沈降プロセスにより、DNA配列の相対量が増加(濃縮)します。

目的のタンパク質が結合するDNA配列(遺伝子またはゲノム領域)の同定には、標準的なPCRが一般的に実施されます。タンパク質特異的な免疫選択により分離された特異的DNA配列の相対存在量を、無関係な抗体コントロールを用いた条件で得られたDNAと比較します。DNA断片のゲル電気泳動は、PCR産物の定量に役立ちます。標準的なPCRに代わるさらに高精度の手法としては、リアルタイム定量PCR (qPCR)があります。ChIP実験により得られた配列をクローニングし、特定タンパク質との相互作用配列に富む断片のライブラリーを作成することもできます。ChIP法とマイクロアレイ解析を組み合わせた新たな手法(ChIP on ChIP法)も、普及しつつあります。この手法を使用すれば、タンパク質-DNA間相互作用またはヒストン修飾に関する全ゲノム地図を作成することができます。

EZ-ChIP Kit

ミリポアのEZ-ChIP Kit(カタログ番号 17-371)には、哺乳類細胞を用いるChIPを成功させるために必要な緩衝液および試薬が含まれています。重要なことに、EZ-ChIPには、ChIPアッセイを確実に成功させるために必要なコントロール(anti-RNA Polymerase II、Normal Mouse IgG、Control Primer)も含まれています。RNA Polymerase IIは、タンパク質をコードする遺伝子の転写を担っているため、転写が活性化されている遺伝子のプロモーター領域に存在します。グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)はハウスキーピング遺伝子と考えられており、増殖中のほとんどの哺乳類細胞で転写されているものと予想されます。RNA Polymerase IIに対する抗体を用いてクロマチン免疫沈降(IP)を行うと、GAPDH遺伝子(および転写されている全遺伝子)を豊富に含むDNAが得られます。一方、Normal Mouse IgGを用いてIPを行っても、GAPDH遺伝子を豊富に含むDNAは得られません。続いて、DNAと結合タンパク質の間の共有結合を切断し、PCRの実施前にDNAを精製します。EZ-ChIPキットには、DNA精製のため、独自のポリプロピレン製Spin Column (MO BIO Laboratories, Inc製造)が含まれています。各Spin Columnには、特殊活性化処理されたシリカメンブレンフィルターが装着されています。このフィルターはDNAを捕捉し、夾雑タンパク質やその他の細胞デブリスから分離します。可溶性の夾雑物をフィルターで分離した後、カラムを洗浄し、DNAを低塩濃度の緩衝液で溶出させます。Bind Buffer「A」、Wash Buffer「B」およびElute Buffer「C」はMO BIO Laboratories, Inc製であり、RNaseおよびDNaseを含有していません。MO BIO Laboratories, Incのこの技術は、フェノール-クロロホルム抽出やエタノール沈殿を必要とすることなく、クロマチンDNAを迅速に精製することができます。精製DNAは、GAPDH遺伝子のプロモーター領域特異的なControl Primerを用いたPCRに供します。

EZ-ChIPの特徴
  • 簡単: Spin Column を用いてDNA 精製を簡単かつ確実に行うため、面倒なフェノール-クロロホルム抽出は必要ありません。
  • 迅速:必要な試薬はすべて含まれており、試薬調製の手間が省けます。
  • 優れた再現性:キットに含まれている陽性および陰性コントロール用抗体とPCR プライマーを用いて、結果の確認および問題解決のための実験を行うことができます

ChIPアッセイの概要

ChIPアッセイの概要を以下に示します。詳細なプロトコールは次のセクションに示します。

A. クロマチンサンプルの調製および免疫選択
  • 細胞のホルムアルデヒド処理。ホルムアルデヒド処理により、タンパク質とDNA の間に架橋が形成され、DNA が目的のタンパク質とともに確実に沈降されます。
  • 細胞の溶解および超音波処理。細胞を破壊して開き、超音波処理により、クロマチンを扱いやすい大きさに断片化します。一般に、DNA を200 ~1000 bp まで断片化すれば、検出ステップ中に十分高い可溶性が得られます。ゲル電気泳動により平均サイズを実験的に確認することが重要です。
  • 免疫選択。標準的なIP と同様、一次抗体、続いて二次試薬としてProtein G アガロースビーズを用います。この処理により、目的のタンパク質および目的のタンパク質と特異的な複合体を形成するDNA が濃縮されます。


B. DNA 精製および検出
  • DNA の精製。65 ℃でインキュベーションすることにより、タンパク質-DNA 間の架橋を外します。クロマチンタンパク質を除去し検出ステップに使用するDNA を調製するため、DNA を精製します。
  • 検出。使用できる検出方法がいくつかあり、PCRの最適条件およびプライマー設計が多様であることから、検出は、実験手順のなかで最も多様なステップです。このステップで定量PCR を使用すれば、最も意味のある結果が得られます。リアルタイムqPCR が理想的ですが、この方法は専用のPCR 機器を必要とするため、すべての施設で利用できるとは限りません。標準的なPCR を用いる場合には、プライマーの選択がきわめて重要であり、次のガイドラインを忠実に守って設計する必要があります:
プライマー長: 24 nt
最適温度: 60 ℃
最適GC含量: 50%
アンプリコンサイズ: 100 ~ 700 塩基対

標準的なPCR の後、PCR 産物をアガロースまたはポリアクリルアミドゲルで泳動し、必要に応じてゲルを染色・撮影します。
システム内容
  • Protein G Agarose/Salmon Sperm DNA、カタログ番号16 - 201C、ロット番号0606031838。超音波処理サケ精巣DNA 600 μg、BSA 1.5 mgおよび組換えProtein G 約4.5 mg を固定化したビーズ1.5 mL 入りバイアル1 本。最終容量3 mL/バイアルの50% ゲルスラリー(0.05% アジ化ナトリウム含有TE 緩衝液、pH8.0 に懸濁)。懸濁液。4 ℃で保存。
  • ChIP Dilution Buffer、カタログ番号20 -153、ロット番号0607034802。0.01% SDS、1.1% TritonX -100、1.2 mM EDTA、16.7 mM Tris - HCl、pH8.1、167 mM NaCl。24 mL 入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • Low Salt Immune Complex Wash Buffer、カタログ番号20 - 154、ロット番号0605031372。0.1% SDS、1% Triton X -100、2 mM EDTA、20mM Tris -HCl、pH 8.1、150 mM NaCl。24 mL入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • High Salt Immune Complex Wash Buffer、カタログ番号20 - 155、ロット番号0609040615。0.1% SDS、1% Triton X -100、2 mM EDTA、20mM Tris -HCl、pH 8.1、500 mM NaCl。24 mL入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • LiCl Immune Complex Wash Buffer、カタログ番号20 - 156、ロット番号0607034805。0.25MLiCl、1% IGEPAL-CA630、1% デオキシコール酸(ナトリウム塩)、1 mM EDTA、10 mM Tris、pH8.1。24 mL 入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • TE Buffer、カタログ番号20 - 157、ロット番号0607034806。10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA、pH 8.0。24 mL 入りバイアル2 本。4 ℃で保存。
  • 0.5 M EDTA、カタログ番号20 - 158、ロット番号0605030421。0.5M EDTA、pH 8.0。250 μL入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • 5 M NaCl、カタログ番号20 - 159、ロット番号0609040598。5 M NaCl 500 μL 入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • SDS Lysis Buffer、カタログ番号20 - 163、ロット番号A607034808。1% SDS、10 mM EDTA、50 mM Tris、pH 8.1。10 mL 入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • 1M Tris -HCl、pH 6.5、カタログ番号20 - 160、ロット番号0607034807。1M Tris -HCl、pH 6.5。500 μL 入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • 10X PBS、カタログ番号20 - 281、ロット番号0610042045。10X PBS 24 mL 入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • 10X Glycine、カタログ番号20 - 282、ロット番号0609040599。1.25 M Glycine 11 mL 入りバイアル1 本。4 ℃で保存。
  • Protease Inhibitor Cocktail II、カタログ番号20 - 283、ロット番号0608038483。200XProtease Inhibitor Cocktail II/DMSO 110 μL 入りバイアル2 本。- 20 ℃で保存。
  • RNase A、カタログ番号20 - 297、ロット番号0605030936。RNase A 600 μg/滅菌水60 μL入りバイアル1 本。- 20 ℃で保存。. Proteinase K、カタログ番号20 - 298、ロット番号0605030940。Proteinase K 600 μg/(50 mMTris -HCl, pH 8.0、10 mM CaCl2)60 μL 入りバイアル1 本。- 20 ℃で保存。
  • 1 M NaHCO3、カタログ番号20 - 296、ロット番号0609040083。1 M NaHCO3 600 μL 入りバイアル1 本。- 20 ℃で保存。
  • 10X PCR Buffer、カタログ番号20 - 295、ロット番号0605030937。750 mM Tris-HCl、pH8.8、200 mM (NH4)2SO4、0.1% TweenR-20、25 mM MgCl2。200 Ll 入りバイアル1 本。- 20 ℃で保存。
  • Control Primer、カタログ番号22 - 004、ロット番号0605030943。5 μM ヒトGAPDH 特異的コントロールプライマー75 μL 入りバイアル各1 本。- 20 ℃で保存。
  • FOR : 5'-TACTAGCGGTTTTACGGGCG - 3'
  • REV :5'-TCGAACAGGAGGAGCAGAGAGGA - 3'
  • Anti - RNA Polymerase II、クローンCTD4H8、カタログ番号05-623B、ロット番号0610044102。Anti - RNA Polymerase II(クローンCTD448)25 μg入りバイアル1 本。- 20 で保存。
  • Normal Mouse IgG、カタログ番号12 - 371B、ロット番号0605030935。正常マウスIgG 25 μg入りバイアル1 本。- 20 ℃で保存。
  • 20% SDS、カタログ番号20 - 280、ロット番号0609040081。20% SDS 242 μL 入りバイアル1 本。室温で保存。
  • Spin Filter、カタログ番号20 - 290、ロット番号40000。Spin Filter 装着Collection Tube 22 本入り1 袋。室温で保存。
  • Collection Tube、カタログ番号20 - 291、ロット番号40000。Collection Tube 22 本入り1 袋。室温で保存。
  • Bind Reagent A、カタログ番号20 - 292、ロット番号40000。Bind Reagent A 25 mL 入りバイアル1 本。室温で保存。
  • Wash Reagent B、カタログ番号20 - 293、ロット番号40000。Wash Reagent B 12.5 mL 入りバイアル1 本。室温で保存。
  • Elution Reagent C、カタログ番号20 - 294。Elution Reagent C 1.5 mL 入りバイアル1 本。室温で保存。

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クロマチン免疫沈降法のプロトコール

A. in vivoにおける架橋形成および溶解


セットアップ

本セクション開始前の準備:

  • 増殖培地10mLを分注した100mm培養プレートで、付着性の哺乳類細胞を80 ~ 90% コンフルエントの状態まで培養し、必要に応じて刺激などの処理を行います。
  • HeLa細胞に関しては、80 ~ 90% コンフルエントの状態における細胞数は約2 × 107 細胞で、調製されるクロマチンは最高10 回のIPに使用できます。
  • 細胞数の推定のみに使用するプレートをもう1枚用意します。
  • PBS のインキュベーション用(ステップ3 を参照)および培養プレートのインキュベーション用(ステップ6 を参照)の氷を用意します。
  • 100 mm 培養プレート1 枚につき1X PBS 21 mLを調製し(10X PBS 2.1 mL と水18.9 mL を混合)、氷上に静置しておきます。この1X PBS は洗浄に使用するため、氷冷しておく必要があります。
  • SDS Lysis Buffer を室温になるまで温め、細胞溶解に進む前にSDS を溶液状にしておきます。
  • Protease Inhibitor Cocktail II を冷凍庫から取り出し、ステップ3 および13 で使用するまでに室温で解凍しておきます。この製品はDMSOを含有するため、18.4 ℃未満では凍結状態にあります。


方法
1.架橋を形成するため、37%ホルムアルデヒド270μL(あるいは新たに調製した18.5%ホルムアルデヒド540μL)を増殖培地10mLに添加し、プレートを穏やかに回し混合します。
  • 最終濃度を1%とします。
  • 高品質のホルムアルデヒドを使用してください。使用期限を過ぎたホルムアルデヒドは使用しないでください。各実験前にホルムアルデヒドを新たに調製する際には、付録に示した「新鮮なホルムアルデヒドの調製」をご参照ください。
2.室温で10分間インキュベーションします。
  • 細胞を撹拌する必要はありません。
3.その間に、氷冷1X PBSをプレート1枚につきチューブ1本に1mLずつ分注し、Protease Inhibitor Cocktail II 5μLを各チューブに添加した後、氷上に静置します。
4.各プレートに10Xグリシン1 mLを添加し、未反応のホルムアルデヒドを抑制します。
5.プレートを回しながら混合した後、室温で5分間インキュベーションします。
6.プレートを氷上に静置します。
7.培地を吸引します。細胞を剥がさないよう注意しながら、できる限り多くの培地を除去します。
8.氷冷1X PBS 10 mLを添加し、細胞を洗浄します。
9.PBSを除去し、PBS洗浄(ステップ8と9)を繰り返します。
10.1X Protease Inhibitor Cocktail IIを含有する氷冷PBS1 mL(ステップ3で調製)をプレートに添加します。
11.各プレートから細胞を剥ぎ取り、マイクロ遠心チューブに移します。
12.700 xg、4 ℃で2~5分間遠心し、細胞をペレット状にします。
13.遠心を行っている間に、必要量のSDS Lysis Bufferに1mLあたりProtease Inhibitor Cocktail II 5 μLを添加しておきます。
  • 本プロトコールでは、HeLa細胞2×107個につきSDS Lysis Buffer 1 mLを使用することをお勧めします。細胞を確実に溶解させるためには、SDS Lysis Bufferと細胞密度の比率が重要であるため、異なる細胞濃度での実験をご希望の場合には、細胞濃度に応じてSDS Lysis Bufferの添加量を調整してください。
14.上清を除きます(このステップで細胞ペレットを-80 ℃で凍結保存することもできます)。
15.細胞ペレットを1X Protease Inhibitor Cocktail II含有SDS Lysis Buffer 1 mLに再懸濁します。
16.マイクロ遠心チューブに300~400 μLを分取します(このステップで溶解液を-80 ℃で凍結保存することもできます)。
17.超音波処理の最適条件が既に決定されている場合には、セクションBに進んでください。決定されていない場合には、付録に示した「DNA超音波処理の最適化」をご参照ください。
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B. 超音波処理によるDNAの断片化


セットアップ

本セクション開始前の準備:

  • 架橋DNAを約200~1000塩基対まで断片化するのに必要な最適条件を決定する必要があります。プロトコールは、付録に示した「DNA超音波処理の最適化」をご参照ください。最適な断片化条件を決定した後、次のステップに進んでください。

方法
1.必要な場合には、セクションAのステップ17で生成した細胞溶解液を5 μL分取し、断片化前のDNAをアガロースゲル解析します。
  • セクションAのステップ17で生成した細胞溶解液を凍結保存していた場合には、氷上で解凍します。
2.氷水で冷却しながら細胞溶解液を超音波処理します。
  • SDS Lysis Bufferに細胞濃度 2×107/mLで懸濁したHeLa細胞を使用する場合、Cole Parmerの High Intensity Ultrasonic Processor/Sonicator (50Wモデル)に2 mm径チップを装着し、最大出力の30%で10秒間、氷水で冷却しながら4~5セット破砕すると、適切な長さのDNA断片が得られます。下図「DNAの超音波処理」をご参照ください。
  • 超音波処理は、細胞溶解液を氷冷した状態で行います。超音波処理は熱を発生させるため、クロマチンが変性するおそれがあります。
3.10,000 xg以上15,000 xg以下で、4 ℃、10分間遠心し、不溶物を除去します。
4.必要な場合には、断片化DNAを5 μL分取し、アガロースゲル解析します。
  • 分取したサンプルをアガロースゲル解析用に調製する際には、付録に示したプロトコール「DNA超音波処理の最適化」のステップ7をご参照ください。
5.新しいマイクロ遠心チューブに上清100 μLを分取します。
  • 分取した上清100 μLは、2×106細胞分に相当する溶解液を含有しています。これは1回のIPを実施するのに十分な量です。
  • 断片化した架橋クロマチンは、-80 ℃で2~3ヶ月間保存できます。
C. 架橋タンパク質/DNAの免疫沈降(IP)

手順設定

本セクション開始前の準備:

  • Protease Inhibitor Cocktail IIを冷凍庫から取り出し、ステップ3で使用するまでに室温で解凍しておきます。この製品はDMSOを含有するため、18.4 ℃未満では凍結状態にあります。

方法
1.必要回数のIPを実施するのに十分量のプロテアーゼ阻害剤含有Dilution Bufferを調製し、氷上で保存しておきます。
  • 1回のIPにつき、Dilution Buffer 900 μLとProtease Inhibitor Cocktail II 4.5 μLを添加する必要があります。
  • 使用する抗体は、陽性コントロールに抗RNA Polymerase II抗体、陰性コントロールにNormal Mouse IgG、および目的のタンパク質に対する抗体(お客様にてご用意ください)です。陰性コントロールIgGとしては、目的のタンパク質に対する抗体と同一種由来のものを使用されることをお勧めします。
2.断片化した架橋クロマチン100 μLの入ったマイクロ遠心チューブ(セクションB、ステップ5)を、実施予定の免疫沈降の回数と同じ本数分用意し、氷上で冷やしておきます。クロマチンを凍結保存していた場合には、氷上で解凍します。
  • 同じクロマチン調製液を用いて免疫沈降を複数回実施する場合には、実施予定の免疫沈降回数分のクロマチン調製液を全量、1.1 mLまで分注可能な大容量のチューブ1本に分注しても構いません。
  • 100 μLにつき、2×106細胞分に相当するクロマチンを含有します。
3.クロマチン100 μLを分注した各チューブにProtease Inhibitor Cocktail II含有Dilution Buffer 900 μLを添加します。
  • あるいは、同じクロマチン調製液を用いて免疫沈降を複数回実施する場合には、免疫沈降の実施回数分に相当するProtease Inhibitor Cocktail II含有 Dilution Bufferを使用します。
4.1回のIPにつきProtein G Agarose 60 μLを添加します。
  • Protein G Agaroseは50%スラリーです。分取する前に、穏やかに転倒混和してください。
  • このステップはクロマチンを「前処理」する、すなわちProtein G Agaroseに非特異的に結合しうるタンパク質またはDNAを除去する働きがあります。
  • あるいは、同じクロマチン調製液を用いて免疫沈降を複数回実施する場合には、免疫沈降の実施回数分に相当するProtein G Agaroseを使用します。
5.ローテーターにて撹拌しながら、4 ℃で1時間インキュベーションします。
6.短時間の遠心(3000~5000 xg、1分間)によりアガロースをペレット化します。
  • Protein G Agaroseビーズを高速で遠心しないでください。過度の重力がかかると、ビーズが破砕または変形し、安定したペレットが得られない可能性があります。
7.上清10 μL(1%)をインプットとして採取し、セクションDのステップ1で使用するまで4 ℃で保存しておきます。このプロトコールを用いて複数のクロマチン調製液を同時に処理する場合には、各調製液からインプットとしてクロマチン1%を採取します。
8.上清1 mLを新しいマイクロ遠心チューブに分取します。
9.上清分画に免疫沈降用抗体を添加します:
  • 陽性コントロールとして、抗RNA Polymerase抗体を1.0 μg/チューブ添加します。
  • 陰性コントロールとして、Normal Mouse IgG
抗体を1.0 μg/チューブ添加します。
  • お客様がご用意した抗体およびコントロール抗体を、1~10 μg/チューブ添加します。抗体の適正量は、実験ごとに最適化する必要があります。
10.ローテーターにて撹拌しながら、4 ℃で一晩インキュベーションします。
  • IPのインキュベーション時間は短縮できる場合があります。インキュベーション時間は多くの要因(抗体、ターゲット遺伝子、細胞の種類など)に依存しますので、実験ごとに最適化する必要があります。
11.Protein G Agarose 60 μLを添加し、ローテーターにて撹拌しながら、4 ℃で1時間インキュベーションします。
  • この処理は、抗体/抗原/DNA複合体を回収するために行います。
12.短時間の遠心(3000~5000 xg、1分間)によりProtein G Agaroseをペレット化し、上清分画を除去します。
13Protein G Agarose-抗体/クロマチン複合体は、25ページに示した順序に従って、冷却緩衝液各1 mLにビーズを再懸濁し、ローテーターにて撹拌しながら3~5分間インキュベーション後、短時間遠心(3000~5000 xg、1分間)し、上清分画を慎重に除去することにより洗浄します:
a. Low Salt Immune Complex Wash Buffer(カタログ番号 20-154)による洗浄1回
b. High Salt Immune Complex Wash Buffer(カタログ番号 20-155)による洗浄1回
c. LiCl Immune Complex Wash Buffer(カタログ番号 20-156)による洗浄1回
d. TE Buffer(カタログ番号 20-157)による洗浄2回
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D. タンパク質/DNA複合体の溶出

本セクション開始前の準備:

  • 1M NaHCO3を室温に戻しておきます。沈殿が認められる場合がありますが、室温に戻れば溶解します。1 M NaHCO3はボルテックスできます。
  • セクションEでの使用に備えて、恒温水槽を65 ℃に設定しておきます。
1.全IPチューブおよび全インプットチューブ用のElution Bufferを調製します(セクションC、ステップ7を参照)。
  • チューブ1本につき200 μLのElution Bufferを調製します:10 μLの20% SDS、20 μLの1 M NaHCO3および170 μLの滅菌蒸留水。
2.全チューブ用のElution Bufferをまとめて調製しても構いません。例えば、チューブ10本の場合、105 μLの20% SDS、210 μLの1 M NaHCO3および 1.785 mLの滅菌蒸留水を混合します。
3.インプットチューブ(セクションC、ステップ7を参照)には、Elution Buffer 200 μLを添加後、セクションEまで室温に置いておきます。
4.抗体/アガロース複合体入りの各チューブにElution Buffer 100 μLを添加します。チューブを軽くたたきながら混合します。
5.室温で15分間インキュベーションします。
6.短時間遠心(3000~5000 xg、1分間)し、アガロースをペレット化し、上清を新しいマイクロ遠心チューブに回収します:
7.ステップ4~6を繰り返し、溶出液をまとめます(総容量=200 μL)。
E. タンパク質/DNA複合体の架橋切断によるDNAの遊離
1.全チューブ(IPおよびインプット)に5 M NaClを8 μLずつ添加し、65 ℃で4~5時間、または一晩インキュベーションし、DNA・タンパク質間の架橋を切断します。このステップの後、サンプルを-20 ℃で保存し、翌日に以降のプロトコールを行うこともできます。
2.全チューブにR Nase Aを1 μL添加し、37 ℃で30分間インキュベーションします。
3.4 μLの0.5 M EDTA、8 μLの1 M Tris-HClおよび1 μLのProteinase Kを添加し、45 ℃で1~2時間インキュベーションします。
F.スピンカラムを用いたDNAの精製
1.セクションEで得られたサンプルチューブ1本につきSpin Filter装着Collection TubeとCollection Tubeを各1本用意します。
2.200 μL DNAサンプルチューブ(IPおよびインプット)にBind Reagent「A」を1 mLずつ添加し、十分混合します。
  • Bind Reagent「A」の添加量はサンプル量の5倍とします。
  • Collection Tubeの底部に沈殿が認められる場合がありますが、手順に影響を与えることはありません。
3.サンプル/Bind Reagent「A」混合液600 μLをSpin Filter装着Collection Tubeに移します。
4.10,000 xg以上、15,000 xg以下で30秒間遠心します。
5.Collection TubeからSpin Filterを取り出します。Collection Tubeは保存し、液体は捨てます。
6.Spin Filterを同じCollection Tubeに戻します。
7.ステップ2で得られたサンプル/Bind Reagent「A」混合液の残り600 μLをSpin Filterに移し、ステップ4~6を繰り返します。
8.Spin Filter装着Collection TubeにWash Reagent「B」500 μLを添加します。
9.10,000 xg以上、15,000 xg以下で30秒間遠心します。
10.Collection TubeからSpin Filterを取り出します。Collection Tubeは保存し、液体は捨てます。
11.Spin Filterを同じCollection Tubeに戻します。
12.10,000 xg以上、15,000 xg以下で30秒間遠心します。
13.Collection Tubeと液体を捨てます。
14.Spin Filterを新しいCollection Tubeに装着します。
15.Spin Filterの白色メンブレン中央にElution Buffer「C」50 μLを直接添加します。
16.10,000 xg以上、15,000 xg以下で30秒間遠心します。
17.Spin Filterを取り出し捨てます。精製DNAが溶出されました。溶出液は直ちに解析に供するか、-20 ℃で凍結保存します。
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G. コントロールのPCR

注記:混入を最小限に抑えるため、本セクションでは、フィルター付のピペットチップをご使用になることをお勧めします。また、以下のPCRで使用する耐熱性ポリメラーゼのメーカーが供給するPCRバッファーを使用することもできます。

1.解析サンプル数分の0.2 mL PCRチューブにラベル表示し、氷上に静置しておきます。
  • コントロールプライマー(本キットに同梱)を用いたPCRに供するDNAサンプルは4本(陽性および陰性コントロール抗体による免疫沈降物、インプット、DNA非含有チューブ[DNA混入に関するコントロール])以上になります。
  • コントロールプライマーはヒトGAPDH遺伝子特異的です。お客様が、研究に合わせた特異的DNAプライマーを設計される場合には、他の動物種由来のものとし、PCR反応条件は実験的ごとに最適化されることをお勧めします。
2.サンプル2 μLをチューブに添加し、氷上に戻します。
3.氷上に静置した各PCR反応チューブに適切な量の試薬を添加します。本ページの表に示すように、H2Oを最初、Taqポリメラーゼを最後に添加します。
  • Hot-Start Taqポリメラーゼのご使用をお勧めします。Hot-Start Taqポリメラーゼを使用されない場合には、最初の変性ステップ後、各チューブにTaqを添加する必要があります。
  • 試薬をマスターミックス形式にされたい場合には、チューブ1本分の損失量を加味した上で十分量の試薬を分注します。

PCR試薬の添加量

ReagentVolume for 1 reaction (μ)
DNA2.0
H2O13.2
10x PCR Buffer2.0
2.5mM dNTP1.6
Control Primers0.8
Tag (5U/μL)0.4
4.PCR反応チューブをサーマルサイクラーにセットします。
5.以下のPCR反応プログラムを開始します:
Initial Denaturation94 °C3 Minutes
Denature94 °C20 seconds
Anneal59 °C30 seconds
Extension72 °C30 seconds
Final Extension72 °C2 minutes
6.PCRチューブを取り出します。反応液は-20 ℃で保存できます。
7.各PCR反応液10 μLを分取し、100 bp DNAマーカーを用いた4%アガロースゲル電気泳動により解析します。PCR産物の予想サイズは166塩基対です。一例として、「クロマチン免疫沈降物のPCR解析」をご参照ください。
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クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ:技術注記

DNAの定量

ChIP実験で得られた精製DNAは、増幅用オリゴヌクレオチドが特定の基準を満たす場合、PCRにより定量することができます。オリゴヌクレオチドは24 merで、GC含量が50% (+/- 4)、Tmが60.0 ℃(+/ 2.0)である必要があります。PCR反応による増幅産物の増加が直線範囲内であることを確認する必要があります。鋳型DNAが多すぎるとPCRに影響を及ぼすため、一般には、このようなPCR反応を行うにはある程度の最適化が必要です。

実験ごとに数本のチューブを用いて、鋳型DNA量を最適化することをお勧めします。最適な鋳型DNA量は酵母に関しては1/25~1/100、哺乳類細胞に関しては約1/10の範囲での調整が一般的ですが、抗体およびクロマチン量に左右されます。また、常に過剰量のdNTPが残存していることを確認するとともに、20サイクルを超えるPCRは行わないでください。各PCR反応には、実験条件全体をとおして変化しないゲノム領域に対するコントロールプライマーを使用することをお勧めします(被験バンドとの比較に使用。被験バンドと十分分離するよう、増幅産物のサイズに十分な差[通常75塩基対以上]が生じるプライマーを使用します)。PCRコントロールには、精製鋳型DNA(ChIP非実施)から分取したサンプルを使用するほか、抗体非添加条件でのコントロールPCRも行います。増幅フラグメントは必ず、250~750塩基対の範囲となるようにします。

PCR産物は7~8%アクリルアミドゲルで泳動し、SYBR Green I (Molecular Probes)の1:10,000希釈液(1X トリス-ホウ酸-EDTA緩衝液、pH 7.5で希釈)で30分間染色します。脱色は不要です。Molecular Dynamics Storm®840または860(青色蛍光モード、PMT電圧900 V)およびImageQuant®ソフトウェアを用いてゲルをスキャンし、定量を行います。この方法はエチジウムブロマイド染色に優る利点があります。SYBR Greenは臭化エチジウムよりはるかに高感度です。また、お客様のライトボックスで使用されるUV電球の質によっては、臭化エチジウム染色したゲルの蛍光が1枚のゲル内でもばらつきます。詳細については、Strahl-Bolsinger et al.,(1997) Genes Dev. 11:83 - 93、放射性物質を用いた定量法については、Suka et al.,(2001) Molecular. Cell. 8:473 - 479をご参照ください。

PCR条件

クロマチンアッセイのプロトコールに関する詳細および情報は、Peter B. Becker監修の「Chromatin Protocols」(Methods in Molecular Biology, volume 119, Humana Press, 1999 [ISBN 0 - 89603 - 665-0] )をご参照ください。次に示すのは、ミリポアにて成功しているPCR条件です:

3T3細胞におけるFosプロモーターのPCR条件初回PCR周期:

  • GGCGAGCTGGTTCCCGTCAATCC - 5’プライマー
  • TGCAGTCGCGGTTGGAGTAGTAGG - 3’プライマー
  • 65 ℃での架橋切断後に得られたDNA サンプル5 μL
  • ステップ6 で回収された鋳型DNA 2 μL
  • DNA 非含有コントロール
  • 緩衝液の条件:Taq DNA Polymerase(最後に添加)2.5 unites、10 mM Tris HCl、50 mM KCl、1.5 mM MgCl2、200 uM dNTP、1.0 uM フォワードおよびリバースプライマーを混合し、最終容量100 μL とします。

サーマルサイクラーの設定:

ステップ 1 : 94 ℃、3分
ステップ 2 : 94 ℃、1分
ステップ 3 : 57 ℃、2分
ステップ 4 : 72 ℃、3分
ステップ 5 : ステップ 2~4を 19回反復
ステップ 6 : 72 ℃、5分
ステップ 7 : 0~4 ℃、無期限設定

2 回目の PCR周期:
  • TCCACGGCCGGTCCCTGTTGTTCT - 5’プライマー
  • GCGGGCGCTCTGTCGTcAACTCTA - 3’プライマー
  • 初回周期で得られたPCR 産物2 μL
  • 緩衝液の条件:Taq DNA Polymerase(最後に添加)2.5 unites、10 mM Tris HCl、50mM KCl、1.5 mM MgCl2、200 uM dNTP、1.0 uM フォワードおよびリバースプライマーを混合し、最終容量100 μL とします。

サーマルサイクラーの設定:

ステップ 1 : 94 ℃、3分
ステップ 2 : 94 ℃、1分
ステップ 3 : 60 ℃、2分
ステップ 4 : 72 ℃、3分.
ステップ 5 :ステップ2~4を19回反復
ステップ 6 : 72 ℃、5分
ステップ7 : 0~4 ℃、無期限設定

2回目周期のPCR産物を1.4%アガロースゲルで泳動します。PCR産物30 μL + ダイ3 μL


DNAの超音波処理

ホルムアルデヒドで架橋形成を行ったHeLa 細胞由来の非断片化および断片化クロマチンは、セクションA(全ステップ)、セクションB(ステップ1 ~ 4)およびEZ- ChIP プロトコールの付録に示した DNA 超音波処理の最適化」(ステップ7 ~ 9)に従って調製しました。続いて、非断片化(レーン1)および断片化(レーン2)クロマチン20 μL を2% アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色しました。レーン2 のDNA は、大多数が200 ~ 1000 bp の長さに断片化されていることがわかります。



ChIPのPCR解析

HeLa 細胞由来のクロマチンと、抗RNA Polymerase II 抗体(カタログ番号05 - 623)またはNormal Mouse IgG(カタログ番号12 - 371)を免疫沈降用抗体として用い、ChIPを実施しました。続いて、GAPDH プロモーター特異的なコントロールプライマーを用いたPCR により、精製DNA を解析しました。抗RNA Polymerase II 抗体を用いたChIP(レーン3)ではPCR 産物が観察されましたが、Normal Mouse IgG を用いたChIP(レーン2)ではPCR 産物が観察されませんでした。GAPDH プロモーター特異的なDNA も、インプット(レーン4)では観察されましたが、「DNA 非含有」PCR コントロール(レーン1)では観察されませんでした。


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