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フローサイトメトリー

フローサイトメトリーは、ひとつの細胞を複数のパラメータについて解析できる強力なプラットフォームであり、基礎研究や臨床医学において、特定細胞種および疾患状態の診断、分離、研究といった幅広いアプリケーションがあります。

T10B9抗体 (カタログ番号 MAB1165)を用いたヒト末梢血単核球細胞 (PBMC)の染色。

T10B9は、大多数のヒト T細胞の表面に発現している T細胞受容体に固有の単形性 (monomorphic)の抗原決定基を認識します。ヒトPBMCは、濃度勾配遠心分離により調製し、濃度 10 μg/mLの T10B9で認識後、FITC標識したヤギ抗マウス軽鎖抗体を用いて染色しました (赤色のヒストグラム)。白色のヒストグラムは、アイソタイプ (マウス IgM)コントロールを示します。データは、Medical College of Wisconsin (ウィスコンシン州ミルウォーキー)の Dr. C. Keever-Taylorより提供されました。



こちらのフローサイトメトリーラーニングセンターをご覧下さい。

フローサイトメトリーとは、懸濁液中の粒子を通過させ、その細胞特性と蛍光特性をレーザーなどの光源を用いて測定する方法と定義されます。これらの粒子はほとんどの場合、細胞です。測定値は、粒子が光源の下流に設置された検出器を通過する際の散乱光、吸収光および発光の変化によって示されます。これらの測定値から、ある細胞集団に含まれる特定の細胞集団およびサブセットを定義したり、アプリケーションによっては、専用のセルソーターを用いて(通常は細胞の電荷を利用して)、物理的に分取することができます(「フローサイトメトリの概略図」を参照)。

蛍光標識細胞からの光信号、細胞から散乱された光線からの光信号を問わず、すべての光信号はコンピュータに転送され、デジタル信号に変換されます。デジタル信号はチャンネル表示とともに、ヒストグラム表示されます。一般的に出力されるのは、細胞数に対して光(通常は蛍光)強度をプロットした1パラメータグラフ(下図「T10B9染色」を参照)か、細胞サブセットを識別するための2パラメータヒストグラムです。

ソーティング機能をもつフローサイトメトリーの概略図。細胞は大きさと蛍光に基づきソートされます。



1パラメータヒストグラムは、イベント数に対して相対蛍光強度がプロットされます。1パラメータヒストグラムが広く使用されている主な理由は、表示の簡潔さにあります。その使いやすいさから、アポトーシス細胞と非アポトーシス細胞の識別などの単純なアッセイに最適です(図「フローサイトメトリーデータ」を参照)。

APO-BRDU Assay (カタログ番号 APT115)により標識したアポトーシス陽性細胞と陰性コントロール細胞のフローサイトメトリーデータ。



同時に収集した複数のパラメータを比較したい場合には、より複雑な2次元、場合によっては3次元のグラフが必要になります。このようなグラフは、1種類のパラメータをX軸、もう1種類のパラメータをY軸としてプロットします(図「2次元ヒストグラム」をご覧ください)。

このようなグラフすなわちドットプロットは、2パラメータ間の関係を表示します。同一サンプルに含まれる個々のサブセットまたは細胞集団は、2パラメータそれぞれの強度の組み合わせに基づき分離されます。細胞集団を比較する場合、細胞デブリスまたは重要でない細胞集団は電子的ゲーティングにより除外することができます。ゲーティングは、フローサイトメトリー用のソフトウェアを用いて、グラフ内からプロットする必要のある細胞集団を選定します。例えば、図「標的集団のゲーティング」に示すように、真のアポトーシスを起こした単一細胞およびアポトーシスを起こしていない単一細胞のみを選定し、細胞デブリスおよび凝集細胞集団を除外するため、ゲーティングが使用されます。次に、ゲーティングした細胞は、その他のパラメータを用いた新たなグラフに表示し、測定値を表示します(図「ゲーティング後の集団」を参照)。


FITC標識 CD4 (カタログ番号 CBL127)を用いた末梢血リンパ球の蛍光強度プロファイルの対数データ

フローサイトメーターを通過した白血球細胞の散乱光プロットを示す 2次元ヒストグラム。X軸に細胞の大きさの指標である前方散乱光、Y軸に細胞の粒状度の指標である側方散乱光を示します。3 種類の特徴的な白血球集団が存在することに注意してください。

上図は、非特異的散乱を除外して、標的集団の周囲に設定したゲートを示します。下図は、ゲート内集団のみのフローサイトメトリーデータを示します。



フローサイトメトリーにおける細胞の標識には、しばしば特定細胞サブクラスに特異的な抗体が使用されます。生細胞のソーティングには、細胞表面エピトープ特異的な抗体が使用されるのが通例です。細胞内エピトープに対する抗体は、抗体が浸透できるよう最初に透過処理した固定細胞にのみ使用されるのが通例です。ミリポアは、さまざまな細胞種特異的なポリクローナルおよびモノクローナル抗体を数多く販売しています。細胞種特異的なモノクローナル抗体群の多くは、国際会議によりクラスター分化(CD)番号を付与されています。例えば、ヘルパーT細胞上に存在する抗原部位のエピトープを認識するモノクローナル抗体は、まとめてCD4と呼ばれています(「CD4標識」を参照)。

ある細胞種または病態を厳密に同定するため、複数のCDマーカーが必要な場合があります。ヒトおよびその他の動物種における細胞の同定には、CDマーカーの一覧を使用することができます。

フローサイトメトリー用抗体の多くは蛍光色素で直接標識されていますが、非標識の一次抗体も数多く、標識二次抗体とともにルーチンに使用されています。フローサイトメトリーに使用される蛍光色素は、主としてフルオロイソチオシアネート(FITC)とフィコエリトリン(PE)の2種類です。この2種類の色素が標識として好まれる理由は、2つの重要な性質にあります。すなわち、両色素とも488 nmのレーザー線で励起されることと、発光スペクトルがFITC 530 nm(緑色)、PE 570~575 nm(橙色)と異なることにあります。蛍光色素化学およびフローサイトメトリー機器の進歩により、今やこれら2種類以外の色素を用いて、細胞に同時に複数の標識を行うことができるほか、細胞のソーティングも可能です(IHCセクションの蛍光色素に関する表を参照)。

フローサイトメトリーは、その汎用性と性能から、診断、科学研究および薬理研究にルーチンに使用されています。複数のパラメータ(パラメータ数を制限するのは、電子的回収装置、フィルターおよび使用できるマーカー数のみ)により細胞をソーティングできることから、フローサイトメトリーは成長し続ける領域であるとともに、抗体と蛍光マーカーを、真に機能的かつ動的なアプリケーションに統合する手法です。

T10B9モノクローナル抗体を用いたヒト骨髄中の T細胞除去 T10B9は、αβ +T細胞受容体を有する細胞を補体依存性細胞傷害作用により選択的に枯渇させる T細胞特異的抗体です (上パネルの青色の矢印)。一方、骨髄中にはγδ +T細胞受容体を発現する細胞も少数存在します (下パネル)。ヒト骨髄懸濁液をミリポアの T10B9 0.35 μg/mLで処理した後、ウサギ補体で 2回処理しました。T細胞除去プロトコールにより、αβ +T細胞を除去することで、同種幹細胞移植後に移植片対宿主病 (GVHD)が発生するリスクが低減されます。残るγδ +T細胞は、宿主の白血病細胞に対する選択的な殺作用に関与するものと推定されています。データは、Medical College of Wisconsin (ウィスコンシン州ミルウォーキー)の Dr. C. Keever-Taylorより提供されました。

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