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免疫沈降法のプロトコール


免疫染色法のフローチャート




従来法によるタンパク質の免疫沈降


免疫沈降法は、細胞溶解液、抽出液といった複合サンプルから特定のタンパク質を精製する目的で幅広く使用されている手法です。従来のIPプロトコールでは、アガロースビーズなどの不溶性レジンに結合させたProtein AまたはGを用いて、溶液中の抗原抗体複合体を捕捉後、遠心により「沈降」させます。従来法によるのIPの限界は、サンプルの取扱いや処理が難しいこと、未変性抗原をビーズから遊離させ機能的アッセイに使用することができないこと、洗浄ステップが多いため再現性および回収率が低いことにあります。

注記:既存の細胞溶解液を使用する場合には、ステップ5に進んでください。

1.付着性細胞は、培養プレートまたはフラスコ中で、氷冷PBSを用いて2回洗浄した後、PBSを除きます。非付着性細胞はPBSで懸濁洗浄し、卓上遠心機で800~1000 rpm、5分間遠心し、細胞をペレット化します。
2.氷冷した改良RIPA緩衝液を細胞に添加します(1 mL/107細胞/100 mmプレート/150 cm2フラスコ; 0.5 mL/5x106細胞/60 mmプレート/75 cm2フラスコ)。
3.氷冷蒸留水に浸して冷却しておいたゴム製ポリスマンまたはプラスチック製細胞スクレイパーで、付着性細胞をプレートまたはフラスコから剥ぎ取ります。細胞懸濁液を遠心チューブに移します。振盪機または回転式撹拌機で細胞懸濁液を穏やかに振盪させ(4 ℃、15分間)、細胞を溶解させます。
4.予冷した遠心機で細胞溶解液を14,000 xgで15分間遠心します。上清を直ちに新しい遠心チューブに移し、ペレットを廃棄します。
5.Protein AまたはGアガロース/セファロースは、ビーズをPBSで2回洗浄した後、PBSに懸濁し50%スラリーとします。アガロースビーズの操作には、ビーズが破損しないよう、先端を切断したピペットを使用することをお勧めします。
6.細胞溶解液は、1 mLにつきProtein AまたはGアガロース/セファロースビーズスラリー(50%)を100 μL添加し、振盪機または回転式撹拌機上で
4 ℃、10分間インキュベーションすることにより、前処理します。細胞溶解液を前処理することにより、後のアッセイで使用するアガロースまたはセファロースへのタンパク質の非特異的結合が低減されます。
7.14,000 xg、4 ℃で10分間遠心し、Protein AまたはGビーズを除去します。上清を新しい遠心チューブに移します。
8.細胞溶解液のタンパク質濃度を測定します(ブラッドフォード法を用いる場合には、タンパク質濃度を決定する前に細胞溶解液を1:10以上に希釈したものを一つ作製し、溶解緩衝液に含まれる界面活性剤がCoomassieベースの試薬に干渉していないかを検討してください)。
9.緩衝液中の界面活性剤濃度を下げるため、トータル細胞タンパク質濃度が約1 μg/μLになるよう細胞溶解液をPBSで希釈します。細胞内濃度が低いことが判明しているタンパク質を免疫沈降させる際には、細胞溶解液のタンパク質濃度をこれより高くしなければならない場合があります(10 μg/μL)。
10.細胞溶解液500 μL(すなわち500 μg)に推奨容量の免疫沈降用抗体を添加します(抗体のデータシートをご参照ください)。目的のタンパク質の定性的な免疫沈降に最適な抗体量は、細胞ごとに実験的に決定する必要があります。
11.細胞溶解液/抗体混合液を振盪機または回転式撹拌機上で4 ℃、2時間または一晩、穏やかに振盪します。キナーゼまたはホスファターゼアッセイに使用する活性型酵素を免疫沈降させる場合には、インキュベーション時間を2時間とすることが推奨されます。
12.Protein AまたはGアガロース/セファロースビーズスラリー100 μL(ビーズ50 μL含有)を添加することにより、免疫複合体を捕捉し、振盪機または回転式撹拌機上で4 ℃、1時間または一晩、穏やかに振盪します。多くの場合、免疫複合体の捕捉は、架橋抗体(ウサギ抗マウスIgGなど)2 μgを添加することにより増大する可能性があります。架橋抗体は、マウスIgG1、ニワトリで産生した抗体といったProtein Aへの結合能が低い抗体を使用する場合には特に重要です。
13.短時間(すなわち、微量遠心機で14,000 rpm、5秒間)遠心し、アガロース/セファロースビーズを回収します。上清を除去し、氷冷した改良RIPA緩衝液800 μLでビーズを3回洗浄します。改良RIPA緩衝液で洗浄することにより、免疫複合体がアガロース/セファロースビーズから剥離する場合があります。このような場合には、より洗浄力の弱いPBSの使用をお勧めします。
14.アガロース/セファロースビーズを2×サンプル調製用緩衝液60 μLに再懸濁し、穏やかに混合します。これにより、3レーン分の泳動に十分な量が得られます。
15.アガロース/セファロースビーズを5分間沸騰させ、ビーズから免疫複合体を分離させます。ビーズを遠心により回収し、上清をSDS-PAGEに供します。後日使用する場合には、上清を新しい微量遠心チューブに移し、-20 ℃で凍結保存することもできます。凍結保存した上清は、ゲルに添加する直前に5分間再沸騰させる必要があります。
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従来法による免疫沈降キナーゼアッセイ

このプロトコールを適用できるのは、細胞溶解または免疫沈降手順により活性が変化しない、あるいは活性に可溶性の補因子を必要としないキナーゼのみです。詳細に関しては、次の資料を参考にしてください。

  • Protein Kinase Protocols(Alastair D. Reith監修)、 Methods in Molecular Biology,volume 124, Humana Press,2001(ISBN 0-89603-700-2)
  • Protein Phosphorylation,A Practical Approach, D.G. Hardie監修、Oxford Press(ISBN 0-19-963729-6)

ご使用になる抗体が、キナーゼ活性に正の影響、負の影響とも及ぼすことなく、細胞溶解液からキナーゼを定量的に免疫沈降させることを確認してください。

必要な反応回数を決定することにより、必要なもの(抗体、緩衝液、同位元素、基質およびP81ホスホセルロース陽イオン交換ろ紙/ゲルレーン)を事前に準備します。使用するネガティブコントロール(非刺激細胞の溶解液;非免疫抗体による免疫沈降;酵素を含有しないサンプル)やポジティブコントロール(精製した活性型酵素)を用意します。キナーゼ活性が確実に反応の直線範囲内に十分おさまるように測定されるよう、キナーゼアッセイ条件を確立します(基質とATPが過剰に存在する場合の制限要因は活性型キナーゼ含有量)。特に活性の高いサンプルについては、最初に反応物質を枯渇させ、サンプル中の活性を低下させることにより、各種サンプル間の測定活性の差を圧縮します。免疫沈降プロトコールの種類を問わず、溶解緩衝液の選択はきわめて重要です。溶解緩衝液は、目的のキナーゼを変性させたり抗体結合能を変化させたりすることなく、キナーゼを効率的に可溶化できる必要があります。

非イオン性および/または陰イオン界面活性剤を使用します。非イオン性界面活性剤(Triton X-100、NP-40など)は、脂質間および脂質・タンパク質間の相互作用を破壊します。陰イオン界面活性剤(SDS、デオキシコール酸ナトリウムなど)は、非イオン性界面活性剤より変性作用が強く、タンパク質間相互作用を破壊する作用があります(Harlow, E. and Lane, D. (1988). Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory. Cold Spring Harbor, N.Y.を参照)。経験的には、キナーゼ活性を保つためにはデオキシコール酸ナトリウムを使用しないでください。また、キナーゼが不安定な場合には、RIPA緩衝液を使用しないでください。RIPA緩衝液を使用すると、EDTAが細胞内Mg2+をすべてキレートし、リン酸化が起こらなくなります。ATPの細胞内プールはリン酸供与体として機能するため、細胞溶解後にリン酸化が生じます。バナジウム酸ナトリウムはほとんどのタンパク質チロシンホスファターゼを阻害し、フッ化物は一部のセリン/スレオニン特異的タンパク質ホスファターゼを阻害します。
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活性型キナーゼの免疫沈降プロトコール

1.刺激された細胞から細胞溶解液を調製し、このプロトコールセクションに記載する手順および緩衝液を用いて、免疫沈降を実施します。
2.免疫沈降物を遠心分離し、ペレットを崩すことなく、できる限り多くの上清を除去します。注記:最終洗浄ステップ後に免疫沈降物を沸騰させないでください。サンプルは常に氷上に置いてください。
3.キナーゼアッセイ用の溶液を調製します:
  • 5倍濃度のアッセイ用緩衝液:100 mM MOPS; 125 mM β-リン酸グリセロール、pH 7.2 ;5 mM EGTA;5 mMオルトバナジウム酸ナトリウム;5 mMジチオスレイトール(使用前に1倍濃度液に希釈)。
  • マグネシウム/ATPカクテル:100 μM非放射性ATPおよび75 mM塩化マグネシウムをアッセイ用緩衝液に溶解(マンガンイオンの方がキナーゼを活性化しやすいことが知られている場合には、塩化マグネシウムの代わりに塩化マンガンを使用することができます)。
  • 32 P] ATP:原液をマグネシウム/ATPカクテルで希釈し、最終濃度を1 μCi/μLとします。
  • 基質(MBPなど):アッセイ用緩衝液を用いて、2 mg/mL溶液を調製します。
4.1アッセイサンプルにつき各成分を10 μLずつ添加し、反応用緩衝混合液を調製します。調製量は、アッセイサンプル数に応じた量に大容量チューブ1本分を足した量とします。このことにより、反応物質の均一性が保証されるとともに、全サンプルのアッセイに十分な量の反応用緩衝混合液が調製されます。十分混合します。
5.32 P]ATP溶液の1:10および1:100希釈液をシンチレーションカウンターで計測することにより、放射能標識の比放射能を測定します。比放射能はcpm/pmol単位で表示します(放射能ATPの濃度はきわめて低いため、ゼロとみなします)。
6.免疫沈降物の入った各チューブを氷上に置いた状態で、適切な量の反応用緩衝混合液を分注し、よく混合します。適切な温度に設定した振盪水浴器に全チューブを移します。インキュベーション温度および時間は、キナーゼごとに最適化します。
7.SDS-サンプル調製用緩衝液を添加するか(サンプルを電気泳動に供する場合)、チューブを氷上に戻すことにより、適切な時点でアッセイを停止させます。多数のサンプルを処理する場合には、最初のチューブと最後のチューブの間で停止用混合液の添加時点に差が生じるため、最初に氷上に移し、その後、停止用混合液を添加することをお勧めします。
8.サンプル30 μLをP81ろ紙にスポットするか電気泳動に供します。ニトロセルロースに転写し、フィルムに露光します。後者の手順を使用する場合には、放射性バンドを切り出し、cpmの測定もおこないます。
9.上記のように測定したATP溶液の比放射能を用いて、キナーゼ活性を定量的に表示します。精製キナーゼをアッセイする場合、直線範囲における触媒反応速度は、ATPから基質に転移したリン酸基のモル数/分/mg(キナーゼ量)で表示します。活性の高いキナーゼは、μ mol/分/mg(キナーゼ量)オーダーのリン酸を転移させます。
10.溶解液から免疫沈降させたキナーゼ活性をアッセイする場合には、活性をキナーゼ1 mgあたりで表示することはできません。代わりに、総カウントから、非免疫抗体による免疫沈降物で測定されたカウントを引き、正味のcpmを求めることにより、相対活性を求めます。非免疫抗体による免疫沈降物のcpmが相当数にのぼる場合には、免疫沈降物に他のキナーゼが混入している可能性があります。
結果は、正味のcpmを用いて、非刺激状態との活性比、あるいは最大活性に対する百分率としてプロットします。
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