| ステリテスト無菌試験デバイスへの過酸化水素ベーパーの影響 |    | Tech Note - TB1002EN00 > カタログ仕様 |
I. はじめに
この試験では滅菌済のステリテスト装置を過酸化水素ベーパー(VHP;Vaporous Hydrogen Peroxide)に90分間×2回、さらします。この試験では無菌試験の前に装置をアイソレータの中に置き、VHPで処理します。無菌試験中に使用しない装置は、次の試験までそのままアイソレータ中に置いたままにします。二回目の試験の前にアイソレータ(およびステリテスト装置)は再度VHPで処理します。 この試験の目的は下記の質問に答えることです: |
この試験で出てきた質問に答えるために、VHPへの接触前と後で、異なる試験を選定し、実行しました。
- メンブレンあるいは装置に損傷が無いことを確認するためにバブルポイント試験を行います。
- FTGおよびTSBでの細菌発育抑制/発育阻止試験のために5種類の微生物を選びました。VHPに対する高い感受性があるという理由で、2品種のStapyloccoccusを選びました。 溶液A 100 mLでキャニスターを2回リンスした後、ステリテストユニットに対して細菌発育抑制/発育阻止試験を実施しました。培地のネガティブコントロールも行います。
- 蒸発残留物試験(揮発性物質の残存が無い、FTIR)は(24時間浸漬による)水での抽出後実施しました。定量分析にはNVR、抽出物の特定にはFTIRを用いました。
試験結果はこの試験で設定した状況に於いてだけのものです。アイソレータの構造、大きさ、滅菌プロトコル等がアイソレータにより様々なので、ユーザーは個々に試験を行うべきです。
II. VHP滅菌のパラメータ
試験するステリテストユニットは2回連続して90分間、VHPにさらします。VHP処理はクライアントのアイソレータで行いました。
この滅菌で用いるアイソレータの特性と詳細は次に示します。
| アイソレータの容量: | 22 ft2 (0.6 m2) |
| 除湿エアー設定: | 22 scfm (623 L/min) |
| 除湿量: | 2.3 mg/L |
| 除湿時間: | 5 min |
| 予熱温度設定: | 90 oC (194 oF) |
| ベーポライザー温度設定: | 100 oC (212 oF) |
| コンディションエアー設定: | 16 scfm (453 L/min) |
| コンディションインジェクション量: | 4 g/min |
| 滅菌エアー設定: | 16 scfm (453 L/min) |
| 滅菌インジェクション量: | 2.5 g/min |
| 滅菌時間: | 90 min |
| エアレーションエアー設定: | 22 scfm (623 L/min) |
| エアレーション時間: | 4 hr |
| エアレーション時間が終了した後のブロワー設定 | 12 hr |
III. 実験の組立
試験は2つのフェーズで行います:フェーズ 1ではステリテストキャニスターに装着されているメンブレンのバブルポイントを評価するために、2群に分けて、2項目を全要素で試験します。
バブルポイント試験は最も感度の高いメンブレンの性能を測定する方法です。
フェーズ 1の結果を基にして、細菌発育抑制/増殖抑制試験と蒸発残留物の評価を含めた、フェーズ 2の試験を組立てます。
フェーズ 1 (Figure 1)
ファクター 1:2種類のメンブレンポリマー(各ステリテストタイプから2ロット番号)
- MCE(ステリテストHAに用いられているセルロース混合エステルメンブレン)
- PVDF (ステリテストHVに用いられているポリビニリデンフロライドメンブレン)
ファクター 2:2つの試験時間
- 最初の試験
- 7ヶ月後
次のように実施:
- VHP滅菌前ステリテスト.
- VHP滅菌後ステリテスト
- AとBの2つの異なったVHPを行います(VHP間に変化があることを予測して、試験群に全要素と項目を含めました)。
- コントロール(滅菌されてない)試料で1対1の比較を行いました。
Figure 1. フェーズ 1.バブルポイント試験。上図には2群に分けた2項目を全要素での試験を表示しています。滅菌は90分、2回のVHPです。
フェーズ 2(Figure 2)
ファクター:1 2種類のメンブレンポリマー(各ステリテストタイプから4ロット番号)
- MCE (ステリテストHAに使用されているセルロース混合エステルメンブレン)
- PVDF (ステリテストHVに使用されているポリビニリデンフロライドメンブレン)
- 最初の試験
- 7ヶ月後
- VHP滅菌前ステリテスト
- VHP滅菌後ステリテスト
- 3回繰り返す。
- 4回の異なるVHP(VHP間に変化があることを予測して)
- コントロール(滅菌されてない)試料で1対1の比較を行いました。
3つのステリテストキャニスターが同じVHPにさらされていないことを確認するために4回のVHPで各々3つの細菌発育抑制/増殖抑制試験を行います。(Table 1)
Table 1. 滅菌プラン
各グルーピング(例えばReplicate 1, MCE, VHP run 1)には5個のキャニスターと1個のネガティブコントロール用キャニスターが含まれます。
抽出物試験
この試験に使われる品物:
- 水に入ったコントロール1個
- VHP滅菌前のステリテストユニットTTHALA210 (MCEメンブレン)1個
- VHP滅菌後のステリテストユニットTTHALA210 (MCEメンブレン)1個
- VHP滅菌前のステリテストユニットTLHVSL210 (PVDFメンブレン)1個
- VHP滅菌後のステリテストユニットTLHVSL210 (PVDFメンブレン)1個
Figure 2. フェーズ 2. 細菌発育抑制/増殖抑制試験の組立。上図には上図には2群に分けた2項目を全要素での試験を表示しています。滅菌は90分、2回のVHPです。
IV. 試験に用いる品物と試験法
フェーズ 1
ステリテストHA,
ミリポアカタログ番号TTHALA210
ロット 1 R5JM60636
ロット 2 R5MM60824
溶剤用ステリテスト,
ミリポアカタログ番号TLHVSL210
ロット 3 F5HM81611
ロット 4 F5KM81550
バブルポイント試験 (Figure 3)
目的:測定基準としての”バブルポイント”を用いてステリテスト無菌試験装置の完全性を測定するため
装置:自動完全性試験機、インテグリテストⅡ(ミリポアカタログ番号 XEIT11011)
Figure 3. 自動完全性試験機を用いて、ステリテストのバブルポイント試験
フェーズ 2
細菌発育抑制/増殖抑制試験
目的:VHP処理後の発育阻害過酸化水素の残存有無の評価
この試験では、各キャニスターは最後に溶液 Aを試験菌と共に100 mLろ過する前に、溶液 Aで2回リンスします。その後に増殖培地を加えます。
この試験に用いたステリテストユニット:
ステリテストHA,
ミリポア # TTHA LA 210
ロット R5JM60626
ロット R5MM60824
ロット R6CM68235
ロット R6EM13545
溶剤用ステリテスト,
ミリポア # TLHV SL 210
ロット F6AM81551
ロット F5NM81788
ロット F5HM81611
ロット F5KM81550
試験に用いた微生物:
Bacillus subtilis (ATCCâ6633)
Candida albicans(ATCC 10231)
Clostridium sporogenes(ATCC 11437)
Staphylococcus epidermidis(ATCC 12228)
Staphylococcus aureus(ATCC 6538)
承認基準:
- ネガティブコントロールが14日間の培養後目視確認で増殖が無いこと。
- ステリテストキャニスターに接種した各試験微生物の濃度が10~100cfuであること。
- ポジティブコントロールが試験微生物の増殖を示すこと。(USP24:バクテリア、酵母、カビは5日以内に増殖)
- 接種されたキャニスターが目視確認でポジティブコントロールと比較出来る増殖を示すこと。
蒸発残留物
目的:ステリテスト装置をASTMのタイプ1試薬グレードの水に室温(20℃)で24時間浸漬後、抽出物の重量およびHPLC、FTIR分析を行うため。
この試験に用いたステリテストユニット:
ステリテストHA,
ミリポア # TTHA LA 210
ロット R5JM60626 x 2
溶剤用ステリテスト,
ミリポア # TLHV SL 210
ロット F5HM81611 x 2
装置:オーブン乾燥 80℃±5℃
V. 試験結果
バブルポイント試験
32個のキャニスターは全てバブルポイントの規格に適合しました。バブルポイントは:
- PVDF: 24.1 ~ 26.3
- MCE: 31.1 ~ 35.3
VHP処理された装置とされない装置の間には、初期と7ヶ月後のバブルポイントに変化はありません。
細菌発育抑制/増殖抑制
微生物の増殖は全て予測通りでした。静菌あるいは殺菌作用は観察されませんでした。試験に用いたキャニスターは全て承認基準に適合しました。
A) TInitialでの細菌発育抑制/増殖抑制試験Bacteriostasis/Fungistasis Tests at TInitial
Table II. Time Initial での計測結果
Table III. Time Initial でのStaphylococcus epidermidisの計測結果
* 金曜日には試験結果が陰性であったが、月曜日には陽性であった。終末には試験が行われていない。
Table IV. Time Initial でのStaphylococcus aureusの計測結果
* 金曜日には試験結果が陰性であったが、月曜日には陽性であった。終末には試験が行われていない。
Table V. Time Initial での Candida albicansの計測結果
* 試験を実施していない。試験前にチューブが破損した。
Table VI. Time Initial での Bacillus subtilisの計測結果
* 金曜日には試験結果が陰性であったが、月曜日には陽性であった。終末には試験が行われていない。
Table VII. Time Initial での Clostridium sporogenesの計測結果
* Clostridium sporogenesisは兼気性なので、試験は液体チオグリコレート培地だけで実施した。
Table VIII. Time Initial でのネガティブコントロール
*NGは試験に用いる培地の最適温度で14日間の培養後増殖が観察されなかったことを意味する。
B) T7Monthsでの細菌発育抑制/増殖抑制試験
Table IX. Time 7 Months での計測結果
Table X. Time 7 Months でのStaphylococcus epidermidisの計測結果
* 金曜日には試験結果が陰性であったが、月曜日には陽性であった。終末には試験が行われていない。
Table XI. Time 7 Months でのStaphylococcus aureusの計測結果
Table XII. Time 7 Months でのCandida albicansの計測結果
Table XIII. Time 7 Months でのBacillus subtilisの計測結果
Table XIV. Time 7 Months でのClostridium sporogenesの計測結果
* Clostridium sporogenesisは兼気性なので、試験は液体チオグリコレート培地だけで実施した。
Table XV. Time 7 Monthsでのネガティブコントロール
*NGは試験に用いる培地の最適温度で14日間の培養後、増殖が観察されなかったことを意味する。
蒸発残留物分析
VHP処理された、PVDFメンブレン付溶剤用ステリテストキャニスターは、水抽出物試験による不揮発性残留物の量が、他の値と比べて著しい差を示しました。全ての抽出物のIRスペクトルは、例えば塩のような無機物質の存在を示しています。しかし、異常な物質は特定されません。
Table XVI. 不揮発性蒸発残留物の試験結果
Figure 4 | Figure 5 |
Figure 6 | Figure 7 |
VI. 結論
- ステリテストキャニスターの初期機能は90分のVHP処理2回によって損なわれないことが判りました。
- バブルポイント試験により、VHP処理によるメンブレンの構造および機能に変化が無いことが判明しました。
- USP 24に記載されている基準微生物およびVHPに対する感受性の高いStaphyloccoccus epidermidis (ATCC12228)を用いて実施した細菌発育抑制/増殖抑制試験により、 溶液Aでキャニスターあたり100mLで2回リンス後、阻害物質の残存が無いことが示されました。
- 抽出物の分析により、異常な化学物質が特定されませんでした。不揮発性残存物の量とステリテストのVHPへの接触には相関性がありません。
- この結論はこの試験の評価条件だけでのものです。アイソレータにより、構造、容量および滅菌プロトコルが異なりますので、アイソレータ毎にバリデートして下さい。この試験で用いた”通常の"状況では、繰返しさらされたアイソレータの滅菌により、無菌試験に関する適正なステリテスト装置の特性に不都合な影響はありませんでした。


